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「私は三年間、一度も彼女に勝つことはできなかった。彼女はずっと一番、そして私はずっと二番だった。私の高校時代の思い出は、ただひたすら勉強をしたことと、彼女に勝てなかったことだけ。灰色の思い出よ。鮮やかな色なんて一つもない。きっと、彼女の思い出は、色鮮やかに輝いているのにね」
「だけど、二番だってすごいことだよ。両親だって安心していただろうに」
「そうね、安心はしていたわ。少なくとも国立大学には行けるってね。私の両親は貧乏だったから、私を大学に行かせるには国立大学以外では無理だったの。私は成績トップだった彼女とともに、東大合格を有望視されていたの」
「それで、君は東大に合格したのかい?」
僕の問いに、杏は再び静かに首を横に振った。
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