340人が本棚に入れています
本棚に追加
杏は烏龍茶を飲み終えると、ベッドに戻ってきた。
そして、静かにゆっくりと僕の隣に横たわる。
それから、そっと僕の手を握る。
杏の手は、小さく、そして柔らかかった。
僕はそっと手に力を入れ、杏の手を握った。
杏はゆっくりと僕の方に体を向けると、黙ったまま僕の顔を見つめて、それから僕の頬にそっと唇をつけた。
「私、こんなことを話したのは、あなたが初めてよ」
杏が言った。
「うん」
僕は頷いた。
「だけど、私はずっと誰かに聞いてほしかったのよ、たぶんね。今まで、そんな風に意識をしたことが無かったけれど、私は心の底では誰かに聴いてもらいたくて仕方が無かったのよ。今の私にはそれがよくわかる」
「どうして、僕に話そうと思ったの?」
「わからない」
杏は首を横に振りながら言った。
「だけど、おそらくあなたに話したことは間違いじゃない。少なくとも、あなたは私の話を聴いてくれるし、聴きたいと思ってくれているわ」
「確かに」
僕は答えた。
そして、「続きの話ももちろん聴きたいと思っている」と付け加えた。
最初のコメントを投稿しよう!