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僕はしばらく杏の胸の温もりを感じた後で、バスローブの中から手を抜いた。
そして、繋いでいた手を離した。
「話の続きをしてくれないか」
僕は言った。
杏は頷いて、はだけたバスローブを整えて、話を始めた。
「法学部に進んだのは、弁護士を目指すためだったの。それは両親の願いでもあった。そのとき、私は自分でも弁護士になりたいのだと思い込んでいた。もちろん、そうでなかったということは、それよりもずっと後になってわかったわ。だけど、その時は少なくともそう思い込んでいたの。というよりも、そう思い込ませていたの。そうでないと、私は自分を保つことができなかった」
「自分を保つことができなかった?」
僕は言った。
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