第八章

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「その通りよ。私は相変わらず友達も恋人も作らずに、ひたすら法律を勉強した。そして、大学在学中に司法試験を受験したの。だけど、私は合格することができなかった。それこそ、寝る間を惜しんで勉強したにもかかわらず。そういうのって、理解できる?」 「わからない。少なくとも、僕はこれまでにそんなに真剣に勉強をしたことがない。あるいは、僕がこれまでに少しでもそんな風に勉強したことがあったとしたら、少しは理解できるのかも知れない」 杏は僕の答えに対して、何も言わなかった。 代わりにもう一度僕の手を握り、ギュッと力を入れる。 それから、しばらくの間、黙ったまま僕の手を撫でた。 その間、僕は天井を眺め続けていた。 彼女の手が僕の手を撫でる度に、彼女を抱きたいという欲求が心の底から沸いてくるのだ。 僕はその欲求を抑えるのに精一杯だった。
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