第十一章

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僕はソファに埋もれるように座っていた。 そして、僕の右隣にはユカリが座っている。 僕たちは二人とも裸だった。 テーブルの上には、厚く膨らんだ茶色の封筒が置いてあった。 「小説が出来上がったの」 ユカリが言った。 「それかい?」 僕はテーブルの上の茶色い封筒を指して言った。 ユカリは黙って頷いた。 僕は封筒を手にとって、中身を確認した。 そこには手書きの小説の原稿が入っていた。 おかしいなと僕は思った。 ユカリはいつもワープロで小説を書いている。 これまでに見てきた原稿だって、全部ワープロで書かれたものだった。 だけど、そこに入っていたのは四百字詰めの原稿用紙で、手書きの文章が並んでいた。
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