第十一章

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僕は原稿を五枚ほど読んだところで、「君の文章はずいぶん変わった」と言った。 「良い方に? それとも、悪い方に?」 ユカリが言った。 「もちろん、良い方に、だ」 僕は答えた。 「ずいぶん努力をしたのよ」 「わかるような気がするよ」 「私はもともと文章を書くのが得意なわけではないの。というよりも、私にとって、得意なことなんて何も無いわ。だから、何をするにしても努力をする必要があるのよ」 「そんなのは誰だって同じだ」 「そんなのはただの気休めよ」 「どうして?」 「世の中には努力もしないで素晴らしい文章を書ける人もいるし、勉強をしなくたって学校で良い成績を残して、有名な大学に入っていく人だっている。あなたのようにね」
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