第一章

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僕は昨日まで、七時半くらいにこの駅を出発する電車に乗って会社に通っていた。 その時間の駅には、多くのサラリーマンがいて、新聞を読み、タバコを吸っていた。 多くの学生がいて、単語帳やノートを広げて勉強していた。 多くの人が電車を待ち、電車が到着すると多くの人が降りてきて、代わりに多くの人々が到着した電車に乗り込んでいった。 名も知らぬ多くの人々が行き交っていた。 だけど、今、僕の周りにはそんな光景はない。 同じ場所でも、時間が変わればこんなに光景が変わるのかと、僕は改めて感じざるを得なかった。 そして、今日から僕は、毎日この光景を目にしなければならない。 きっと僕も周りの人間たちと同様、ずいぶん眠そうな顔をしているのだろう。 だけど、それは僕自身にはわからない。
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