第ニ章

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僕はそんな景色を何も考えることなく、ぼんやりと眺めていた。 やがて、電車はゆっくりと速度を落として、小さな駅に停車した。 駅のホームに人の姿は無い。 そのホームに降り立つ乗客の姿も無い。 駅の周りには、民家が何軒かあるだけだ。 もっと遅い時間だったら、あるいは乗降する客もいるのだろうか。 僕は想像してみたけれど、やはりそのホームに人が電車を待っている姿や、そのホームに人が降り立つ姿を思い描くことはできなかった。 本当にこんな駅が必要なのだろうかと、疑問を抱かざるを得ない。 だけど、この駅があろうがなかろうが、僕には関係なかったし、他の乗客にも関係ない。 きっとこの駅が無くても、世の中はいつもと変わりなく回り続けるだろう。
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