第一章

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二年目、僕は相変わらず成長できずにいた。 そもそも、僕は勉強が苦手ではないというだけで、それ以外のことについては、人並みか、どちらかというと、人並み以下だった。 スポーツだってろくにできないし、身の回りの整理だって苦手だ。 一度に複数の物事をこなそうとすると、決まって全てが不完全なままに終わったし、一から十までの説明がなければ事務をこなすことができなかった。 それでも、周りは何も言わなかった。 上司も何も言わなかったし、同僚も何も言わなかった。 僕はある意味において特別だったのだ。 僕の勤める会社には、僕が卒業した大学を卒業した人間なんて、片手で数えることができる程度しかいない。 そして、それらの人々は皆、誰もが畏れるような幹部となって、会社の中心にいた。 学歴だけを見れば、僕もそういった人間たちと同じなのだ。 だから、誰しも僕が将来の幹部であることについて疑いを持たなかったのだろう。 だから、僕が大した仕事をしなくても、誰も何も言わなかった。
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