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2003年
6月6日 午後 11時08分
今月に入ってから1人目を殺るのにかなり時間を喰った。心臓の高なりは未だ止まらない。彼女だったソレの暗い暗い飴玉が2つ覗く。じゅるりと濡れて、緩くなった半径3センチほどの咥内から粘液がたれ出て、胸に滴っている。その姿に甘美さが漂っていた。
すでに脈はない。目立った外傷もない。髪も整っている。完璧だ。抜かりなはない。この被害者の顔を見るのも今日で見納めだった。
もうソレから気持ちは離れていた。ソレにかかったロープを首元から回収する。
絞殺が、一番手際がよくて、一番効率が良い。何より快感が格別だ。性的欲求に近い形の快感を得ることができる。
でも、なんだろう。この、終わった後にくる絶望は。
念入りにターゲットの起床時間やら帰宅時間、食事時間やら趣味にかける時間、はたまたトイレの時間までを綿密に計算にいれて、今日が一番リスクのないものだと判断した。そこまでして愛でた相手を殺るときのゾクゾクした瞬間の、あの生きる死ぬの瀬戸際の最後の声を聞くと、「あぁ、生きているんだ」とたとえようもない充足感が得られる。
しかし、その一時を過ぎれば、残るのは穴の空いた靴下のような絶望のみ。そろそろリスクのない殺人にも飽きてきた。
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