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この町は、比較的に殺人事件が多い。メディアに取り上げられるほどでもないが、念入りに調査をするとその実態が浮き彫りになるだろう。不可解な惨殺事件の数々を警察が見てみぬふりをしているとも思えない。しかし、それでも上手くやり過ごせる。そう仕込まれた。もっとも、去年この街の自殺者数が全国一位の原因を探る必要が一番先決だと思うけどね。
集団下校というものは一種の恒例行事のように回ってくる。決まって、ぼくが仕事をした次の日だ。不愉快だった。若かりし頃はみんなで帰ると安全・安心だと思えることが不思議で仕方なかった。特に人と接するのを避けていた時期とも重なっていたので尚更嫌悪した。要因がぼくにあることも理解できずに、だ。
「中学生にもなって集団下校とは恥ずかしさを通り越して趣があるね」と手嶋が呟く。
趣が恥ずかしさの先にあるのであれば、平安の先人たちはシャイな人が多かったんだろうか。
「君に言ってるんだよ。宮間君」と手嶋がぼくに言った。
「あぁ。そうだね。物騒な世の中だよ」
「物騒? 宮間君何か知ってるのかい?」
先程も言ったように、この地域では集団下校がやや恒例的に行われるようになっている。そこで、どこで何があったなどの事件を子供が耳にする前に早急に手を打つようにしている。
事件の後のことなので、どのみち後手に回っているのだが。
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