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「いやいや、集団下校しなければならないほど物騒だなーってことだよ」とぼくは言う。
「確かに……うら若い乙女には危険がいっぱいなんですなー。宮間君いざというときは助けてね」
「……はぁ」
「ちょっと。宮間君ノってよ。宮間君だって可愛い顔してるんだから、もしかしたらそーいう趣味の変態に襲われるかもよ」
なのに助けなきゃなんないのか。
「それはちょっと困るな」
そいつをヤらなきゃならなくなるからね。
「この辺りは気味悪いところが多いよね。どうしてこんなに廃れてるんだろう」
バブル期のラッシュに乗り遅れたこの地域一体は、バブルの崩壊とともに建物が完成する前に撤退する土木企業・団体が後をたたなかった。それだけにとどまらず、さらに都会に移住する人々の急増も歯止めがきかなくなったせいもあり、空き家が多い。それもあってか、経営が成り立たなくなった病院や、少子化の煽りを受けた高校が次々と門を閉じた。
「そういえばさ、男子の間ではよく噂になってるのがあるね?」
「……ウワサ?」なんの話だ?
「宮間君は本当に人と関わらないね。もっとたくさんの人と話した方が良いよ。ほら、あそこに見える病院があるだろ」
手嶋が指差した先には、その当時最新の機器を備えた大型の病院があった。幼かった頃はお世話になったし、お世話もしてあげた場所である。今ではその当時の面影もないくらい灰色に煤れている。
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