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手嶋は全員の顔と名前を知っていたようだが、ぼくは手嶋と釜石以外の誰一人として名前すら知らなかった。まぁ、覚える必要もないので、適当にメガネ君、のっぽ君、ロン毛君とでも名付けることに決めた。
メガネ君はその名の通りメガネが似合いそうだからだ。ちなみにメガネはしていないし、視力も2.0あるそうだ。
のっぽ君はその名の通り背が高そうだからだ。ちなみにメガネ君より小さい。
ロン毛君はその名の通りロン毛が似合いそうだからだ。ちなみにメガネをしている。
「なんだか宮間君。すごい頭の悪そうな覚えかたをしていそうだね」手嶋が失礼なことを言ってきた。
確かに人の名前を覚えることができないのも少なからずこれが起因している気がする。
「……ここか」
頭の中でホラーゲームのBGMが流れ出した。目の前に悠然と構えるのは、夕刻に手嶋が指差した廃病院だ。
「どうした? 手嶋、怖じ気ついたか?」
「そっ、そんなことないよ!」
「手嶋、ぼくは正直に言った方が良いと思う」
(ごわいよー)
「ぼくにしか聞こえてないよ」
ガゴンッ!
「うわっー!」
「手嶋、痛い。痛いよ」
手嶋がぼくの背中にのっかって、髪の毛を引っ張る。
「なんだよ。門開けただけじゃねぇか。ったく、先が思いやられるぜ」
「やっぱりやめないかい?」
「もう遅いと思う」
「ふぇーん」
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