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高校入学式。
いじらしい長い黒髪をかきあげ、私は歩く。
川面を流れる花びらは、
私を送り出すかのようで。
それがたった一つの家族のように思えた。
向かうは戦場。
人間のエゴと憎しみが交差する、戦場。
私はどれだけ戦い抜けるだろう。
…勝って何をするのだろう。
真新しい校門をくぐると、
待ってましたといわんばかりに、サークルの勧誘がくる。
「アニメサークル入らない?」
「二次元に興味はありません」
「アイドルサークルは?」「ふざけないで」
するりするりとかわしていくうちに、誰かにぶつかった。
「大丈夫?」
「すみません」
二人の声がハモり、思わず顔を見合わせる。
目鼻立ちの整った顔。
上級生ぽいが、サークルの勧誘ではなさそうだ。
「あんた、新入生だろ?」
「あっはい…」
「名前は?」
「へ?」
変な声がでてしまった。
その男の人は、ぷっと笑った。
「ふははは…おかしい。へ?だって。」
見る見るうちに顔が赤くなってゆく。
「笑わないでくださいよ。」
「改めて、名前は?」
「井坂 蘭です」
男の人はふうんというと、「おれは、石森 隼人。よろしく」
といい、てを差し出した。「捕まれ」
私がてを握ると、すたすたと歩き始めた
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