750人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
女将が視線を島田に戻す。
「このくらいの器量なら、これでどうどすか?」
そろ盤を弾き、島田に見せる。
私の値段だろうか?
まさか値付けされるとは思っていなかったので驚いたのと同時に、不安になる。
お金受け取ったら、ここから出れないんじゃないの? たしか身請けされないと出れないとか……まさか私、土方さんに売られたの……?
嫌な想像だけが頭を過る。
「いえ、この金子は受け取れません」
島田の声にハッとし、島田を見る。
「一ヵ月程で迎えに来ますので、妹に賃金だけ渡してやってください」
そう言って頭を下げる。
知らぬ間に体が強張っていたようで、スッと力が抜ける。
安心したものの、土方を疑ってしまった事に罪悪感を感じた。
最初のコメントを投稿しよう!