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「……は? ……えっ…何言っ…え? ……」
栄太郎は予想に反した反応を見せた。最初はキョトンとしていた目をこれでもかと言う程に見開き、明らかに動揺しきっている。
どんな状況でも冷静で取り乱す事も無く、的確な対処を飄々(ひょうひょう)と遣って退けそうな栄太郎が、私の言葉でこんなにもパニクるとは微塵も思っていなかったので、驚いてしまう。
未だに固まったままの栄太郎を不思議に思いながら見つめつつ、私の言葉の何がそんなに栄太郎に衝撃を与えてしまったのかと考える。……が、分からない。そんなに変な事を言った覚えはない。
「あの…栄太郎さん?」
理由が分からないと、悪い事をしていなくても不安になるのはどうしてだろう? その思いが声に出てしまった様に、栄太郎に問い掛けた言葉は心許(こころもと)ないものになってしまった。
しかし、私の問い掛けが聞こえていないのか、栄太郎は返事も反応も返してくれない。
もう一度、今度は先程よりも少し大きな声で、栄太郎の腕を揺らしながら呼び掛けてみる。
そこで漸(ようや)く栄太郎はハッとした様に瞬きを繰り返し、私を見ている様で見ていなかった目が私を捉えた。
と、その瞬間ボンッと音がしそうな程に栄太郎の顔が茹蛸(ゆでだこ)の様に染まった。
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