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「……じゃあ、英語ね。
飛行機の中が少し寒かったので、私はスチュワーデスに毛布を持ってきてもらいました。
はい、これ英訳して」
「え、なんだっけ。持ってきてもらいました、だよな。えーと」
水樹が考えている間にバスは私たちが降りる二つ手前のバス停についた。
そこで乗り込んできたのは、私達と同じく受験するように見える三人の男女と、キチッとスーツを着こなした20歳位の男性。
そして誰が見ても危ないと判断出来るような血走った目のグレーのスウェットをきた男性、30代前半くらい。
「あの人危なそうじゃない?」
私はグレーのスウェットの男を相手に気付かれないくらい小さく指差して、英訳を頑張っている水樹に同意を求めた。
「なんかこぇーな。あいつ」
それに対し、小声で水樹が答える。
「なんだろ。フツーじゃねぇって感じだな。目を合わせるなよ」
「う、うん」
受験の緊張からか、いつもに増して警戒している水樹に戸惑いながらも私はうなずき返した。
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