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バスが急停車する。続いてカチャと不気味な音がした。
私と水樹は同時に顔を上げた。私達が見たのは
拳銃を構えたスーツを着こなした男だった。先程の危なそうな男ではない。
拳銃の先はバスの運転手のこめかみに向けられていた。
バスの乗客はほぼ全員、喋るのを止めて男の方に視線を向けている。
しかし
「やっぱり皆で百人一首とかするわよねぇ、悦っちゃん」
「持ってきたわよ。坊主捲りもしたいねぇ」
「そうねぇ、うっふっふっふ」
「きゃははははは」
二人の70代前半と思える老女達は理解しきれていないのか空気を詠めてないのか、和やかな会話をしている。
そこへつかつかと男が歩いて行き、拳銃の先を彼女達に向けた。
「おい、お前ら。このバスは俺がジャックした。一言も喋るな」
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