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◆ ◆ ◆
「自己紹介しませんか?これから貴方が俺たちを呼ぶ時、不便だと思うので」
バスが再び動き出した時、俺は男に向かって提案した。しかも、敬語で。
俺の考えは相手の名前を知って通報でもしよう、というところだ。そして、それを敢えて相手のメリットと見せかける。
勿論、了承を必ずしも得ることが出来るとは限らない。これは俺の一種の賭けだ。
少し考える素振りをした男は険しい顔をしながら深く頷いた。
「じゃあ、俺からでもいいですか?」
またしても男は深く頷く。それを見た俺は自己紹介を始めた。
「田村水樹(タムラミズキ)です。中3で、多分……今日高校受験の予定です。好きな食べ物は…まぁいいですよね。サッカー部に所属してました。以上です」
かなり適当。正直、自分から言い出しときながら、何を言えばいいのか分からなかったからだ。
ちらっと俺が唯をみると唯はかなり困惑した顔をしている。俺は安心させればいいと思い、笑って頷いた。
それを見て唯は小さく、よし、と一人で気合いを入れて自己紹介を始めた。
「西田唯(ニシダユイ)です。私も同じく受験生です……。テニス部に所属してました。終わりです」
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