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雀の涙程も、元気を取り戻していない竜一に朝の約束を施行させてから、20分後。
俺達は教室のある校舎の、地下へと階段を降りていた。
「狩屋か……。いくら雨宮先生といえ、その記憶に残っていないとなると不可思議だな」
「そうだろ?」
和樹さんの前ではロクに話さなかったが、結局、気になってしまい、信達に話したのであった。
「だが、ここで俺達が話していても仕方のないことだ。お前は目先のことに集中しろ」
「わかってるって」
もともと細い目をさらに細め、睨むように厳しい視線を向けて来る。
ううっ、俺はそんな頼りなくもあるのか。
「わかっていると言うわりにはヘラヘラしているように見えるが?」
…………そう言われるとぐうの音も出ない。確かに、自分で思ったより落ち着いてる。
「まあ、和樹さんと話して、気持ちが楽になったというか……な」
頭で理解しているわけでもないから、言葉で表そうとしても上手く言えないわけで……。
そのせいか、信はますます訝しそうに眉間にシワを寄せた。
「……感じるところは人それぞれだろうが……よもや、あの教師の悪い影響を受けたのではあるまいな」
悪い影響って何だ、悪い影響って!
とか、擁護するつもりは全くないが、一応苦笑いで首を振る。
と、そこで、
「なぁ、どの訓練場取ったんだ?」
ちょうど階段を降り切ったタイミングで木原が聞いて来た。信がまだ何か言いたそうだったが、そっちはタイミングを逃したらしく、口を閉じていた。
「今日は借りてる人、少なかったから、一番近い12を取った」
「マジか、ナイス!」
と、言葉通り良くなったとばかりにグーサインを向けて来た。正直、12だろうが何だろうが、そこの苦はさほどないが、何かが嬉しいんだろう。
そう思いつつ、通路右側の暗闇へと目を凝らした。
……しかし、地下とは言え、どうしてこんな暗いんだよ。
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