出来上がったもう一つの術

45/53
1346人が本棚に入れています
本棚に追加
/514ページ
内心、呟くと同時に、なんとか発見する。そこに歩み寄り、ポケットから鍵を抜き払った。 そして、探り当てたドアノブの下の鍵穴に差し込む。ガチャリと音が立ち、俺は扉を開放して中に入り込んだ。 入って右側の壁に手を合わせ、照明のスイッチを押す。 灰色の殺風景な部屋に明かりが満ちた。 「各自、入念にストレッチをしておけ。固まった体で突然動くことはお勧めしない」 という、信の指示に俺や木原は素直に従った。ただ、最後に入ってきた奴は違う。 いつもなら、我先にとストレッチを行い、むしろ力入ってるんじゃないか? とすら思うのだが、だらっと力なく下げた腕を上げるそぶりすらしなかった。 竜一は、まだ今朝の模擬戦を引きずっている。 これはもしかしてあれか? 家の事情どうこうで、そう簡単に負けてはいけなかったとか。 だとしてもだなぁ。こんな生気のない奴に銃を向けるってのは……。 「おい、竜一」 「………………ああ」 小さっ! 羽虫の羽ばたきみたいに小さかったぞ!? ……いや、それはともかくとして、信は何を言うつも 「そんな情けない姿を見せていたら水沢が幻滅するぞ」 …………………………。 いや、見てない。 「……ぉぉぉおお……うおおおおお!」 何が起こったのか、突如としてりの口から声が湧いて出て来た。 「おおおおおお! っそうだな! こんな姿を見せるわけにはいかない! おおおっしゃあ!」 ……いや、だから見てねぇっつってんだろ!
/514ページ

最初のコメントを投稿しよう!