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それ以降、わたしは自分を切ることをやめた。
周りが¨そう¨言うように、熱心な団体の様々な人々や職員の涙や説得には、イチミリたりとも感化はされていなかった。どんな話をしたかも、悪いが一切覚えてはいない。
わたしがこの唇から懺悔録らしき音を発したのかすら疑問でしかない。煩い雑音から逃れようと、きっと今のわたしのように吐くべき台詞を垂れ流したのだろう。
それでも、世間が¨そう¨言うのなら、真実は¨そう¨なるに違いない。それが、現実で真実なのだ。
嗚呼そろそろ、経過観察+就職準備の面談の時間だ。
対面した相手を安心させる微笑み方は、とうに身についた。
「わたしは、恐らくやむにやまれずにわたしを施設に預けた両親が残してくれた名前を誇りにしています。わたしがここまで頑張ってこれたのは、愛のこもった¨ほのか¨と言う名前のおかげであり………」
穏やかな微笑みと共にいつもの台詞を読みあげる。いかにも満足そうな面談官たちの表情が、一層滑稽さを増し、わたしは思わず吹き出しそうになった。
-終-?
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