はじまり

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―現実―  今現在わたしに突き付けられているのは、高校卒業の後の人生である。施設を出て自分自身の力で生きなくてはならない…タイムリミットまで二年をきった。  わたしのようにハンディがある子供は、長く根気よくいい子でい続けて、世の中に認めてもらわなければ仕事は分けて貰えない。  わたしのハンディは、決してわたしの責任でも罪でもない、と言う職員もいるけれども…。  それならば、何故、普通の家に育っている子供のように世間は見ないのだろう。現実は、いかにわたしが惨めで、汚くて、醜いか…そして身体の芯から腐りきっていて、どれほどの浄化も役に立たない…醜悪さ加減を物語っているではないか。  わたしを誰か殺せばいいのに。  事件や事故は世界に溢れている。  テレビ視聴を制限されたわたしにすら、それはちゃんと伝わってくる。世界のどこかでは、戦争や病気で今この瞬間も誰かが死んでいるらしい。  ならば、ゴミから片付ければいいじゃないか。すごく合理的で簡単で清廉なことだ。  ゴミの片付けに心を痛める人間など何処にもいない。何故みんなはわたしを殺さないのだろう。  わたしだけじゃない。  わたしの施設の子供たちは、少なくとも生まれた時から肉親からゴミのように捨てられ、成長過程のファイルにも「性格、素行に問題あり」と記された、どうしようもない生きた塊…。  わたしの肉親も、きっとわたしがこんなになるのがわかっていて、ただゴミ箱に放り込んだだけだったのではないか。  わたしがどうしようもない塊だと理解するまで、少々時間がかかった。  気がついたら、わたしの周りからは一切の刃物が消えていた。  いちいち覚えてはいないが、初めは髪や服に始まり、手の甲、爪、腕や脚、そのうちにわたしは左の手首から上腕までを切り裂いたらしい。  さすがにその時は死にかけたらしいが、死ねばよかったのにとしか思えない。だからといって、助けた人々を恨む気持ちも勿論感謝する気持ちもない。  ただ、¨わたしのようなものはは自分自身の運命も決めてはいけない¨のだと、病室で目が覚めた瞬間に悟った。  …ただ、それだけだ。
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