プロローグ

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 そして『死神』こと、久我 優人は、たびたび上級生に絡(カラ)まれることがあった。 あだ名もそうだし、何か気にくわないことがあるのだろう。 私はその人と関わったことがないから、実際彼がどんな人なのかは知らないが、噂では、本当に冷酷で冷たい人だと聞く。 だからなのかは分からないが、喧嘩を吹っ掛けられ、暴動を起こすことが多々あった。 そして今回のも、多分似たようなものだろう。 そんなことを考えつつ、私は知ちゃんと一緒に教室へと入った。  確か彼は、私たちの隣の教室の生徒だったはずだ。 しかしその姿を確認したことは、未だ一度もない。 “彼とは関わらないのが身のため” そう、知ちゃんは言っていた。 確かに、それが一番いいのかもしれない。 私みたいに目立たない、普通の生徒は関わらない方が吉だ。 …でも、なぜだろう。 見たこともないのに、どんな人かも分からないのに、彼に関心が向くのは。 『死神』と呼ばれ、訳もなく、あったとしても理不尽な理由で喧嘩を吹っ掛けられ暴動を起こす彼に、私は同情したのだろうか。 だとしたら、それはお門違いだ。 私が同情するほど、きっと彼は落ちぶれていない。 私が構わなくても、関わらなくても、そんなの関係ない人なのだ。  始まった授業もそっちのけに、志乃は窓の外の景色をぼんやりと見つめた。 寒さの残る空は、まだ青い。
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