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まだ寒さの残る翌日。
私はまた、コートの中に服を着込んで登校した。
今日は昨日ほど気温は低くないと聞いたが、それでも外気はずいぶんと冷え込んでいる。
だから念には念を押して、服を重ね着してきた。
しかし押しすぎたその結果、かなりの厚着になってしまったが。
しかもおかげで何だか小太りに見える。
『…悪く言って、ドラム缶』
今日も朝が一緒になった晴也は、そう言って私をからかった。
“ドラム缶は工場へ帰れ”と。
もちろんそれには従わず、きちんとこうして学校に来たが。
何て思い返していると、
「…志乃、すごいもこもこだね。」
教室に入り、自分の机へと席に着いた私の姿を見て、開口一番に知ちゃんはそう呟いた。
それはまるで、今までに見たことのない珍獣を初めて目にした時のような、新鮮な驚き方だった。
続けて言う。
「…コート、脱がないの?太って見えるよ?」
ずばりと、一切取り繕った風(フウ)のない言葉が告げられた。
きっと知ちゃんは、『歯に衣を着せる』という諺(コトワザ)を知らないはずだ。
「…やっぱり、そうだよね。」
それにかなり傷ついた私は、少し悩んだあと、渋々コートを脱いだ。
けれど思っていたより、それほど外気は寒くはなかった。
教室の後ろに取り付けられたロッカーにコートをしまいながら、私は一人、その事実に関心していた。
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