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きっちりと穿かれたズボン。
しかしそれには不釣り合いなほど、着崩されたシャツ。
光に反射して光る、銀のドッグタグ。
それから、風で柔らかく揺れる黒髪。
浮世離れした、整った綺麗な寝顔…。
それが男子生徒の正体だった。
しかし私は彼のことを見たことがなかった。
こんなに綺麗な顔立ちなら、一度見れば多分忘れないだろうけど、でも自分はこの人を知らない。
ということは、やはり彼とは初対面。
とは言っても、彼は今眠っているから、事実対面にはなっていないが。
しかしそれにしても、と志乃は思った。
彼は思わず見蕩(ミト)れてしまうほどに端正(タンセイ)な顔立ちをしている、と。
地べたで丸くなって眠るその男子生徒の横にしゃがみ込み、志乃はまじまじとその顔を見た。
閉じた目から伸びる長い睫毛(マツゲ)。
綺麗なあごのラインに、キメ細かな肌。
シュッととおる鼻筋。
どこをとっても完璧なパーツ。
芸能人顔負けの、美貌。
…寝息はまだ、続いている。
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