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「ごめん、俺のせいで…。」
「いやいや!それは私が悪いんですから、謝らないでください!!」
俺が謝ると、彼女はばっと顔を上げて否定の言葉を発した。
しかも首と手をブンブンと大きく横に振りながら、焦ったように。
その様子に、素直だなとしみじみ思う。
「でもさ、六時間目の授業、受けた?」
しかしその言葉にぴたり、と彼女の動きが止まる。
“思考停止”
そんな言葉が合うくらい、固まっている。
「…あ……。で、でも、一時間くらいなら大丈夫…です!」
頼りなくうなだれたり、ピンと伸びたりする背中。
補足された強気な台詞も、態度だけでまる分かりになる言動も、全て彼女の裏表のない性格故(ユエ)。
「ほんとに?」
「は、はい…。」
いつもより饒舌(ジョウゼツ)になるのを自分でも感じながら、俺はそれを止める気にはならなかった。
いつもの自分じゃ考えられないことだが。
「……あ、そう言えば…。」
「なに?」
突然、思い出したように彼女は声をあげた。
まるで、話を切り替えるように。
「…あ、あの、もしよかったら名前、教えてもらってもいいですか?」
その問いに、俺は少しでも嫌な顔をしたのだろうか。
彼女は俺を見ると、少し狼狽(ウロタ)えた。
そして言う。
「嫌なら、いいんですが…。」
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