プロローグ

4/11
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
冷たい感覚と、急激な寒気に私は起きた。 いや、正確には“起きてしまった”というべきか。 とにかく、私は目覚めた。 とはいえ意識はまだ虚(ウツ)ろで、はっきりとしない。 そればかりか、何故自分は起きてしまったのか分からないほど。 なにせ起きたてなのだ、無理もない。 時間もまだ夜中の2時。 起きるにはまだまだ早すぎる時刻だ。 そんな時間に、何故自分は起きてしまったのか。 再度疑問に思う。 確かに、嫌な夢は見た。 内容はうっすらと、しかも断片的にしか覚えていないが、あまり、いい夢だと言い難いことは確か。 しかしそれでも、起きるほどのことではない。  そう再確認した彼女、澤村 志乃は、乱れた髪を手ぐしで整え、二度寝しようと布団をかけ直そうとしたところではたと気が付いた。 布団をかけようにも、その当の布団がなかったのだ。 どこにいったのかと辺りを見渡したところで、地面に落ちているのを発見した。 道理でないはずだ。 しかもこれじゃあ、寒いはず。 自分が目が覚めたのも頷ける。 なにせ今は11月。 もう夜も、すっかり冷え込む季節なのだ。 そんな時に布団を落としてしまっては、朝のニュースで放送されかねない。 “今朝、市内に住む女子高校生の澤村 志乃さん16歳が自宅マンションで遺体となって発見されました” なんて。ははは。 ジョークを考えつつ布団を拾い、志乃は潜(モグ)るように深く布団をかぶった。 そしてようやくそこで、自分が汗をかいていることに気がついた。 そのせいでパジャマがぐっしょりと濡れている。 多分、これは冷や汗だ。 ということは、自分は余程嫌な夢を見たのだろう。  そんな事を思いながら、彼女の意識は誘(イザナ)われるように、再び深い眠りへとおちていった。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!