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リビングに行くと、そこにはすでに朝ご飯のトーストとコーヒーが2つずつ、テーブルの上に並んでいた。
作りたてなのか、まだ湯気がたっている。
兄は、先にテーブルについていた。
そして私が来たのに気がつくと、にっこり笑って、
「おはよう、志乃。」
そう柔らかな挨拶をしてきた。
彼は、私の兄である澤村 比呂。
兄、といっても義理だが、とても優しくて見た目同様やんわりとした人で、それでいてきちんと人の痛みの分かる人だ。
ちょっと抜けているのがたまに瑕(キズ)だが。
「お兄ちゃんおはよう。」
そう返しながら、私はお兄ちゃんの前に腰を下ろした。
手に持ったカバンとマフラーを邪魔にならないよう横に置きながら、テーブルの端にあったイチゴジャムに手を伸ばす。
それを確認したお兄ちゃんは、マグカップを少し持ち上げながら、忠告するように言った。
「…そういえば今日、随分と冷え込むみたいだね。」
「え、そうなの?…ちなみに、何度くらい?」
パンにジャムを塗りながら、問いかける。
お兄ちゃんはコーヒーを一口飲むと、悩むように少し首を傾げた。
「んー…確か、最低気温が9度、だったかな?」
「…じゃあ、昨日より寒くなるんだ」
確か昨日の気温は10度をきっていなかったはず。
そう思い返しながら、トーストをかじる。
「うん。だから、温かい格好をしていくんだよ。」
「ありがとう。もちろん、そのつもりだよ。」
兄は、少し心配性なところがある。
悪く言えば過保護、といったところか。
昔は一時期やんちゃだったこともあるが、落ち着いた今じゃそれが目に見えて分かるくらいに、私に構いたがる。
そして私は私で色々あったから、多分余計に心配になるんだと思うけど。
その『原因』がなくなった今でも、“親代わり”になってくれている。
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