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「さむ…っ」
ドレスで外に出てきたから寒い。
フロントに上着、置いてきちゃったし。
あーあ…なにやってんだろ。あたし。
裕介にあんなに会いたかったのに。
少し我慢すればよかったのに。
逃げ出してきちゃうなんて。
嘘でも、嫌だったの。
他の男の彼女のフリするなんて………。
麻里子はホテルのプールサイドにしゃがみこんだ。
水面にうつる自分はなんだか裕介に会う前とは別人のようだ。
会った後の方がかわいくない。
パサッ
「え?」
麻里子の肩に上着が。
振り返ると裕介が立っていた。
「裕介……」
「……バックレるか。こんなパーティー…」
「……次期社長のくせに………」
ヤバい…涙が……
「……麻里子ちゃんはこんなにしてまで俺に会いに来てくれたのにな。意地悪してごめんな。」
「…………………」
「俺も腹くくんないとな。」
「え?」
裕介はしゃがんでいた麻里子を立たせた。
「……なにもかも捨てて麻里子ちゃんと逃げようかな。」
「……それって……お父さんの後を継がないってこと?」
「うん……次期社長なんか辞めて、子猫ちゃんといつもベッドで毎日抱き合うんだ。」
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