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次の日、麻里子が目を覚ますと裕介はスーツに着替えていた。
「裕介?」
「…行かないと……」
麻里子はベッドから裸で飛び降りて裕介に抱き着いた。
「麻里子ちゃん……」
「行かないで。」
「………………」
「また会えないなんて嫌っ!!」
「……親父はおじいちゃんと……すげぇ努力してあの会社を建てたんだ。やっぱり……逃げ出すわけにはいかない。」
裕介は抱き着く麻里子の腕をほどいた。
「ごめん……麻里子ちゃん……」
裕介は哀しく笑うと部屋を出て行った。
もう
会えない。
そういう意味なんだと思う。
あの肌の温もりも忘れなくてはいけない。
好きになってはいけない人だった。
あれから何ヶ月経っただろうか。
ニュースでカワカミ製菓の社長退任のニュースが流れた。
新しく社長になったのは
裕介ではなかった。
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