第一章

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「・・・仮にでも、此処、リムスシクロ国に一つしかない、学校兼ギルド、セイント・ローズの最高責任者。 学長兼ギルドマスターの面影すらないわね。 アリア。」 「貴女もその娘よ~♪」 「なった覚えはないわ。」 「あら・・・。」 「私は養子。 それ以下はあっても、それ以上はないわ。」 凛と響く低い声で念押しすると、用意されている朝食の方へ足を運ぶカノン。 それを切なそうに見つめる女性・・・アリア・モーガン。 赤い髪は短くボブに切り揃えられ、同じく赤い瞳の目はたれ目の彼女。 今の彼女は、国一の強さを誇るギルドマスターには、到底見えないだろう。 見えるのは、ただ純粋に娘を思う母親のそれ。 (カノン・・・カノン・モーガン。 貴女はもう私たちの娘なのよ? 貴女の時は・・・あれから止まったままなのね・・・。) アリアは、ふぅ~っと深い溜め息を一つつくと、 自分も朝食を食べるべく、席につく。 「あ、そうそう忘れるとこだったわ。」 「・・・・・?」 思い出したように話しだすアリア。 だが、顔は思いっきり何かを企む顔だった。 怪訝な顔でアリアの次の言葉を待つカノン。 「貴女、今日から学園に入れるからね。」 「は・・・・?」 今のカノンの顔を表現すれば、鳩が豆鉄砲をくらったような顔だろう。 「昨日言うつもりだったんだけど、私寝ちゃって。」 アリアはギルドマスターである。 毎日が多忙で、忙しい事はカノンも知っている。 が、流石に当日とはいささか急過ぎるにも程がある。 カノンもやっと頭が働いたのか、いつもの表情に戻る。 「何?消されたいの?なら今すぐに・・・。」 「ちょーっと待った!!! 何で!? 何でそうなるの!? 話を最後まで聞きなさい! そしてその球体消して!」 必至なアリアに、一つ溜め息をつくと、手に作り出していた真っ赤な球体を消す。
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