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俺は今、獣人族の淑女の方々と共に泥染めという染め物の工程の1つを行っていた。
アドヴァリと呼ばれる獣人族の伝統的な衣装に用いられる染め方で、手で紡いだ糸にパラロスという植物の煮出し液と、泥に含まれる鉄塩とで独特な茶褐色に染めて織る。
このパラロスで染める泥で染めるを何回も何回も繰り返す事によりこの独特な茶褐色を出すのだそうだ。
さて、俺は今その泥染めを泥田で行っているわけだが、何故こんなことをしているのか思いだそう。
といっても、数十分前だが。
◆◆◆
目が覚めると木目の天井が目に入った。
知らない天井だとは言わない。
俺んちも土壁の木造建築だから天井は木目なのだ。
まぁ、年輪の形や板同士の境目が違ったりと、良く見たら違うとこは結構あったけど。
それより、と先程までの事を思い出す。
勇者召喚に巻き込まれ死にかけたと思ったら、神に蹴り落とされて命は助かったが異世界に来てしまった。
夢ではないことぐらい頭では分かっているが、心が納得しない。
夢だと思いたい。
「お?坊主起きたか?」
野太く低い唸るような声に目を向ければ、2m以上はあるだろう身長の、甚平のような衣装を着た狼が二足歩行で歩いてきた。
もう、夢だなんて調子の良いことは思いません。
だから初っぱなから濃いキャラと出会わせないで神様!!
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