主人公、疎まれるのこと

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最近ようやく日課になってきた朝議 朝起きるのが苦手な為嫌いだったが、世話焼きの侍女のおかげで欠席せずにいる 平原に戻ってから漸く五日 俺は“御使いの従者”の位に収められ、偉くもなく低くもない曖昧な立ち位置に立たされ続けている 理由を上げると、泗水関での功績と虎牢関での功績が広まっているのが原因だ 一刀よりも目立った俺が御使いとして名を上げれば、たちまち一刀の信頼が俺に移行しかねない。それほど尾ひれに背びれに足まで生やして俺の噂が各地を走り回っているそうな 各国に対しては俺の正体を明かし、俺の存在を諸侯と張り合う切り札にした その時点で、俺の“天の御使い”としての役割が終わったようなもので、その称号に興味も未練もないから構わない だから、この中間管理職で世の団塊世代のオヤジ達の味わっている『上意下達・下意上達』の難しさを身に染みて理解している 「…………」 「…………」 いや、本当に 広間に着いたは良かったものの、この不倶戴天の二人が早速睨み合いを始めた またかよ――ひとりごちてこめかみを押さえる どうにも相性の悪いこの二人 眺める将たちもいつも通りの光景を苦笑いで応対している 「侍女の分際で軍議に何の用だ? 下郎。敗残兵から奴隷に格上げでもされたのか?丁度良く靴が汚れているからその醜く肥えた舌で掃除してくれないか?」 「おやおや知性の足りない関羽様の腰巾着まだご自分が偉いと思っておられるのですか。無知な上無能なのですから辺境で無駄に余った鬱憤を発散しては如何でございましょうか」 ストレートにお互いを罵り合う馬鹿二人が俺の預かる人間だと思うと本当に頭が痛い ちなみに灯司は愛紗との相性も良くない 姉妹揃って堅物だし、そう言う奴が嫌いなのだろうか。星とはまあまあ仲が良いみたいだし 灯司の人選びの基準はなんなんだ…… 「二人共、今は軍議をしているんだぞ」 「いいえ、姉上。このような輩がこの場にいることを軍議にかけるべきです。姉上もお気に召してはいないではないですか」 愛紗に目を向けず吐いた痛烈な言葉に愛紗は口を閉ざすしかなかった
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