蹉跌

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 だが、丸尾には、見つけ出せなかった。 1978年4月 旅館 海遊館  バイト最終日。 監督が赤ウーピンを切り出しながら言った。 「本来なら、バイトは同じ人間を入れてはいけないことになってる。けど、丸尾。おまえ、来週からも来ないか。というか、もう二週間居てくれないか」 「いえ、そろそろ大学に戻らないと、ゼミの教授に名前をわすれられてしまうので」 「そうか、このままうちの会社に欲しかったんだがな。M大の地理学なら大歓迎だ」 「え、ぼくは独逸文学ですよ」  どうやら、監督に大きい手が入ったらしい。  饒舌になっている。  というか、赤ウーピンを切ってくるのだ。かなりの手だろう。  リーチをかけてこないところをみると、マンズの一色か。  丸尾は、北、白と切り出して、西待ちの国士無双をテンパイしてしまった。 「怖いときには突っ込め!! リーチ!!」
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