蹉跌

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「確かに、勇気と、時には無謀な突進力は必要だな。そして、丸尾には文学部でありながら地質学をかなり学習している幅広い知識欲もある。どうしても欲しくなった。しかし、勝負は別だ。男にはどうしても勝たねばならない時がある。そして、それは、意外なことに人生には何度かある」  上家の主任は、びびりながら東を切った。どうやら、丸尾の国士無双は警戒されていないようだ。おそらく、タンヤオ辺りに読んでいるのだろう。それよりも監督の手が、かなり怖いらしい。  下家の、監督は先ヅモをして、盲パイ。言葉が止まった。    しかし、リーチの丸尾が握ったのは、赤五萬。  監督の手が倒れた。  清一色、一気通貫、平和、ドラが一つ増えて、ドラ4。  数え役萬だった。 「これだったのか」  監督が先ヅモをしていた西を見せた。 「はい」  いつもなら見せないのだが、国士無双の手を見せた。 「なんでリーチ?」  主任は理解できてないようだった。 「痛いな。バイト代が1日分飛んだ」  そう、勝たねばならない勝負の場面で、勝つ人間だけが、男になっていくのだ。
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