蹉跌

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2002年5月 福島県 浜通  久々のサイクリングだった。  ゴールデンウィークの最終日まで、仕事が入り。  仕事を終えた午後に、マウンテンバイクもどきを購入し、旅に出てきた。  丸尾の性質は北を求め、水辺を求めるだった。  大洗の海に面したとき、5月の7日だというのに、気温は30度。生暖かいシーブリーズにゆだりながら、日立まで走ることにする。  このときは、1977年に臨界運転を行い、かなり危ない橋を渡りながら、増殖実験を繰り返してきた、常陽のことをすっかり忘れていた。  世界で五番目の高速増殖炉となっている。2007年に検査機器と燃料棒の衝突事故があり、停止しているはずだった。修理して実験を再開するにも、金属の劣化が激しい初期の高速増殖炉では、あまりにも危険すぎる。  だのに2008年には停止中の常陽で、火災が発生している。そして、なぜか詳細が発表されないままだ。  しかし、このサイクリングはまだ、それ以前。2002年の夏の初めだ。  大洗の海水浴場は、人のカラフルな水着や、パラソルや、意味不明のモザイク模様が浜辺にあふれていた。  そして、その外れのフェリー乗り場では今は、苫小牧行きフェリーが。 以前には室蘭行きフェリーが発着している。 丸尾は4月に、室蘭から帰って来たばかりなのだ。
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