蹉跌

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 丸尾は人間が核を自由に操り、支配できるとは考えていなかった。  一旦暴走し始めたら大変な被害を生む核分裂エネルギーは国土が狭く、人口密度の高い日本には向いていないと考えていた。  しかも石油以上に自給が不可能なウラニウムを電力の要に置くことは亡国につながると指摘した。  丸尾の意見はプチブル市民的であり、右翼的ですらあった。  もしも連合赤軍なら粛清の対象にすらなる意見だった。  しかし、このサークルでは否定はされるがざっくばらんに意見を披露することができた。  何でもアメリカの帝国主義、アジア侵略のための軍事だとする党の論法に正当性もインテリジェンスも感じなかったが、小賢しい市民団体の作り笑いの中にいるよりは居心地がよかった。
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