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サークルのボックスを出ると階段を降りてきた女性がにっこりと笑った。
「ぺそ。今まで日中か?」
「うん、まるさんは社研?」
「これから暇?」
「ゴメン三瓶さんと」
「残念だな、明日反核デモで、明後日から福島に泊りがけのバイトなんだ」
「えー、しばらく逢えないんだ」
「うん」
ぺそは丸尾にとっては恋人だった。ただ、ぺそにとっては丸尾は№3の相手に過ぎなかった。月に一度、土曜の午後から月曜の朝までを絡み合う。丸尾は相手を束縛しない関係を理想としていた。ぺそにとっては丸尾は便利な男だったのかも知れない。
そして、とりあえず、この週末はどちらも予定が入ってしまっていたことが判った。それで十分だった。
ぺその存在は丸尾が詩を書くのに触媒となっていればよかった。
日中、すなわち日中友好協会はその後日中友好友の会と名称を変える。中国共産党に直接接触するグループだ。
6年前に中華人民共和国はニクソン訪中を受けて開国し、日本政府とも国交を開始していた。そして、2年前には毛沢東が死去し、四人組が粛清された。
中華人民共和国の共産党自体が大きく変質してしまった。その中で本来毛派だった日中友好協会は急速に存在意義を失いつつあった。
つまり、ぺそが存在するそのスタンスに対して丸尾は否定的だった。
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