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墨山が見せる相変わらずの姿に、表情が崩れぬように堪える黒壁。
黒壁の親友にして主家である黛武彦から、絶大な信頼を受ける下士官・墨山風介。
彼もまた阿真野川防衛の任務中に曹長に昇進している。
かつて、黒壁・黛が陸軍特別志願士官学校生徒時代、助教官として彼らの班を受け持ったことがあった。
兵士にとって恐怖の対象は士官では無い。それが伍長や軍曹、曹長といった下士官であることを、黒壁らも生徒時代に身を以って体験したことになる。
士官学校入校と同時に世間一般では軍人として扱われるとはいえ、軍内部では実戦経験はもちろん、実際に則した知識も持たない者を一人前とは扱うはずはない。
助教を務める下士官にとって、いずれ未来の士官に、自身の上官になるかもしれない者とはいっても、入校したての生徒はヒヨっ子ですらない卵以下の存在だ。
厳しく激しい教練の中で何度も怒鳴られ、幾度も反復させられ、数え切れないほどやり直された。
生徒たちが上手く出来たと思えたことも何事かにつけ難癖を付けられ、補習と称して教練時間を延長されることも度々。
『そんなことも出来んのか!?』
『馬鹿が! 要領を覚える調練ではないわ!』
『貴様らの下につく兵が哀れだ!』
『馬鹿は馬鹿なりに頭を使わんか!』
罵詈雑言に耐えることも彼ら士官学校生徒の調練であり、任務といえた。
教練も講義も終わり宿舎に戻れば倒れこみ泥のように眠った青春時代。
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