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黛の第四聯隊との協働が為ったとはいえ、北蝦全体の兵力差は歴然である。
このまま何の手も無く星陵郭へ向かえば、前方の星陵郭と星陵郭へ向かう第三師団に挟撃されることになる。
また、第三師団同様に星陵郭に向かう、残り一万以上の南方侵攻軍本隊にも挟撃されるだろう。
挟撃を成立させないために、あたかも碁盤の上に一足飛びに打たれた一石を無力化せねばならない。
だが、この一石の存在感たるや。
難攻不落の稜堡型要塞・星陵郭と天才フォルカー・ヴァン・ゴルトヴィンタ。
しかもこの天才は、陽国産の新造銃を何の抵抗も無く戦線に投入してきた。これまでの局地的な火力の優勢もいずれ引っ繰り返されるだろう。
故に黒壁が企図するのは、ウ帝国の兵站に負荷を与え続けること。黛との合流点に向かいながら、刹那の時まで敵輜重隊を叩き続けるしかない。
第三師団と南方侵攻軍本隊の行軍を出来得る限り停滞させる。それが彼の方針であり、それが功を奏せば黛との合流後に取り得る策もある。
しかし黒壁は、言葉を待つ忠実な三人の部下に対し、方針らしいことはただ一言だけしか告げなかった。
「いずれは星陵郭へ」
その言葉が意味するものは、未来を知る術の無い者らが今だ知る由もない歴史的邂逅。
星陵郭の地で初めて、フォルカー・ヴァン・ゴルトヴィンタと黒壁経教、そして黛武彦の三者が一つの戦場に集う。
そしてこの世界の戦史上、その先鋭的にして革新的な戦術により、後々まで語り継がれることになる戦いが目前にまで迫ることを、この時点で認識できた者がいたであろうか?
その戦いを『第二次星陵郭攻防戦』という。
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