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「えっと……、何でこういう悪戯したのかな?」
「……好奇心です。」
「うん、いいこと……、とも言えるね。けどさ……、もうやらないでよね?」
「すみません……。」
赤く、何かが伝った跡が染みた白衣を着た青年とその前に土下座する瀬里奈。
この状況を理解するには少し遡る必要がある。
「ケチャップを血に見立てて使うのってよくあるけど、あれって簡単にわかると思う。」
「……は?」
「なんでまたいきなり?」
昼休みにいきなり由紀菜がこう切り出したのが始まりである。
「あとね、吸血鬼モノに定番な赤ワイン!あたし、赤ければいいってモノじゃないと思う!」
「瀬里奈から何か感染したの?」
「ちょっと、麗奈、冷たい!」
「だって、ねぇ?瀬里奈。」
「う~ん……、私に聞かれても……。」
(……実際見たけどね、嬉しそうに赤ワイン飲んであげくにはカクテルで潰れた吸血鬼……。)
そして瀬里奈の思考は良からぬ方向へと走る。
(……。ケチャップ=トマト=赤い+あの人が飲んでた保存血液=たぶんおもしろい!どうしようやりたい!!)
「瀬里奈?どうしたの?」
「ダメだ、また意識が別の空間に行ってる……。」
その日の放課後……
「由紀菜の言う通り、たぶんケチャップじゃ簡単にばれる。…とすれば……。」
独り言を呟きながら、瓶に入れたトマトジュースを持っていつもの場所へ向かった。
瀬里奈の姿を見つけた猫達は嬉しそうに近づいてきたが、それをなんとか無視して奥へ奥へと進む。
奇跡的に今は当の本人は外出中。保存血液をしまってある入れ物を探し出し、その中に持ってきた瓶を混ぜてみた。
(作戦……完了!)
途中で戻って来はしないかという緊張から解放され、何事もなかったかのように猫達と遊びながら青年の帰りを待った。
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