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「お疲れ~、やっとテストから解放されたことだし、どっか行かない?」
「うっわ麗奈、さすが超タフネス!あたしは帰って寝るー!」
「ゴメン、私パス。そんな気力ないわ。」
「え~……、じゃああんた達明日の放課後覚悟しなさいよ!!」
「マジ!?やっべしっかり休まなきゃ!じゃね!」
「あ、じゃあ私も帰るね。お疲れ様~。」
テスト最終日を迎え、生徒達はようやく重荷から解放されてそれぞれがそれぞれの帰路についた。
(ん~……、あんまり早く帰ってもすることないのよね。……そうだ!)
少女--瀬里奈はその家庭環境上、家にはほとんど娯楽がない。そこで、彼女は『ある場所』へ向かった。
今では大通りの陰で廃れきった裏通り。人気のないこの場所は野良猫のメッカであり、大の猫好きである瀬里奈には最高の場所だった。
瀬里奈が訪れると、野良猫達は「待ってました」とばかりに飛びついてきた。
「こらっ、危ないから暴れないの!そんなに楽しみだったの?」
ここの猫達は他と比べたら異常なくらい人懐っこい。お蔭で鬱病の気がある瀬里奈も最近は落ち着いてきている。
もちろん、ここにはある要因がある訳だが……
「おっ!?今日は早いなあ。どうしたんだ?」
「あ、えっと、今日は……、っというかあなたこんな昼間に普通にうろうろしてて大丈夫なんですか!?」
「ん?ああ、平気。これがただの白衣だと思うなよ?」
通りの奥から出てきた青年。彼が猫達に影響を与えた人物であり、瀬里奈の運命をも動かした人物である。
血を思わせる色の瞳と、どうやらただものでないらしい白衣は日の光の下でもよく映える。瀬里奈は少し戸惑った。
「でもやっぱ夏の陽射しはこたえるなぁ……、日陰行こう、日陰!」
青年に連れられて、瀬里奈はいつもと同じ日の当たらない薄暗い路地裏へやってきた。
「いやー、暑い。」
「そんな格好してるからですよ。白衣くらい脱いだ方がいいんじゃないですか?」
「駄目。これないと溶けるかもしれない。」
「というか、あなた本当は夜行性……」
「いいんだよ!俺は何十年もこういう生活してるから。」
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