おばあちゃん。

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おばあちゃんはソファに座って,テレビを見ていた。 いや。 見ていた,とは言えない。 私はその横顔を,今でも忘れることができないでいる。 焦点の合わない虚ろな目でテレビのある方を向いて,ぼんやりとしていた。 真っ暗なリビングを,テレビの明かりが青く照らし,静かな部屋に場違いな笑い声が響いていた。 家族が出払った家に,一人ぼっちにされたおばあちゃんが浮かぶ。 娘の発病。 慣れない家での家事。 初めての孫たちとの生活。 友達のいない生活。 陽が落ちたことにも気付かず,暗くなった部屋で一人,不安と心細さに包まれたおばあちゃんの気持ち。 ごめん。と思った。 泣きそうになった自分を奮い立たせて,つとめて明るく振る舞うことしか,できなかった。 おばあちゃん‥ ごめんね。。。
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