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「あ、ルノア。遅かったね。」
シンがルノアと呼ばれた女性に話しかけた。
「こんな時に限って、いつもは全くない仕事が入っての。それで?こやつが適性のある人間かのぉ?」
「そうだよ。こちらは小野宮蓮くん。」
二人の視線が俺に集まる。
なんだかルノアさんの目が、なんか新しい玩具を見つけた子供みたいにキラキラしてるのは気のせいか?
「蓮君。こちらが血と影を司る神で、吸血鬼の真祖のルノアール・アマレーナ・ディメルモール。通称ルノア。」
「よろしくの。小野宮蓮。」
「あ、よろしくお願いします。」
そういや、話してたから忘れてたけど、俺吸血鬼にされるんだっけか?
まぁ生き返られるし、断る理由も特にないか。
少し霊体の体は名残惜しいけど、まぁ肉体があった方がおいしい物が食べれるかな?
観光地を回る度に美味しそうな物が沢山あったのに、それを食べれないのは辛かったなぁ。
「シン。早速始めてもいいかのぉ。」
ルノアさんが子供のようにワクワクしている様子は、話し方とか容姿からは想像できず、ギャップが半端なかった。
「蓮君もいいみたいだね。やっちゃっていいよ。」
いや、まだ声に出して了承した記憶はないけど・・・。
「まだ、いいとは――――」
言い終わる前に、いきなりルノアさんが首元に噛みついてきた。
チューー
そんな効果音が幻聴で聞こえてきそうな程、血を吸われている感覚が脳にダイレクトに伝わる。
体が麻痺したかのように動かなくなり、思考力がだんだん下がってきているのも分かる。
どうやらこのまま気絶してしまうらしい。
それが吸血鬼になるときの副作用なのかは知らないが、俺の意識はそこで途絶えた。
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