緑の失われし国

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賢者の石が消えたことを確認してから、辺りを見渡してみる。 まず視界に入るのはまだ小さめだが、立派に育った世界樹。 オアシスに元々あった植物も前より瑞々しいなっており、力強さが増した気がする。 「後は・・・緑を少し増やしておくか。」 虚空から前に採集した植物の種を無数に取り出す。 「その前に土を湿らせないと。」 すぐさま水属性の魔法を使い、ここら一帯に雨を降らせる。 そのあとに先程出した種を風魔法で均等にまいていく。 そして最後にさっき使った木属性の魔法を広範囲で使い、種を一気に成長させた。 「小さな森の出来上がりっと。」 先程までは砂漠だったのに今では小さな森が出来ていた。 これから少し経てばまた森は大きくなり、また元の緑豊かな場所に戻るだろう。 「結局これの原因が国王なのか、はたまた別に黒幕がいるのか判らなかったな。」 それがフラグだとも気づかずに、帰ろうと転移を唱えようとすると、奥の茂みから白衣を着た研究者らしき男性と、身軽な格好をした男性が歩いてきた。 「ほぉ・・・あの枯れた土地をあの短時間で・・・実に興味深い。」 白衣の男性が目を怪しく光らせながら呟いている。 もう一人の方は全く興味がないようで、退屈そうに草を抜いて遊んでいる。 なんなんだコイツ等? 見た感じはただの変態だけど。 白衣の方は研究者っぽいからサーダの人間か? 「そこの君。」 考えていると白衣の男に声をかけられた。 因みに顔はフードを深く被っているため見えない。 「何か?」 「君がこれをやったのかね?」 これとはたぶん、というか絶対に森のことだろう。 「もしそうだと言ったら?」 「実に興味深い! 君を体の髄まで調べたい!」 うわー・・・。変態さんでしたか。 というか隣のやつ露骨に気持ち悪い顔するなよ。 一応仲間なんだから。 というか仲間から引かれるあいつは何なんだ? 「此方も一つ聞くが、この土地の生命力に関する実験をしたのはお前か?」 「・・・もしそうだと言ったら?」 一瞬黙ってからさっきの俺の言葉を真似て訊ねてきた。 「別にどうもしないよ。ただその莫大な魔力を何に使う?」 「ほう。何やら知ってるようだが、目的までは知らないようだね。」 男はニヤニヤ笑いながらこちらの反応を伺っている。 「目的は何だ?」 「教えるとお思いかね?」
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