8763人が本棚に入れています
本棚に追加
賢者の石が消えたことを確認してから、辺りを見渡してみる。
まず視界に入るのはまだ小さめだが、立派に育った世界樹。
オアシスに元々あった植物も前より瑞々しいなっており、力強さが増した気がする。
「後は・・・緑を少し増やしておくか。」
虚空から前に採集した植物の種を無数に取り出す。
「その前に土を湿らせないと。」
すぐさま水属性の魔法を使い、ここら一帯に雨を降らせる。
そのあとに先程出した種を風魔法で均等にまいていく。
そして最後にさっき使った木属性の魔法を広範囲で使い、種を一気に成長させた。
「小さな森の出来上がりっと。」
先程までは砂漠だったのに今では小さな森が出来ていた。
これから少し経てばまた森は大きくなり、また元の緑豊かな場所に戻るだろう。
「結局これの原因が国王なのか、はたまた別に黒幕がいるのか判らなかったな。」
それがフラグだとも気づかずに、帰ろうと転移を唱えようとすると、奥の茂みから白衣を着た研究者らしき男性と、身軽な格好をした男性が歩いてきた。
「ほぉ・・・あの枯れた土地をあの短時間で・・・実に興味深い。」
白衣の男性が目を怪しく光らせながら呟いている。
もう一人の方は全く興味がないようで、退屈そうに草を抜いて遊んでいる。
なんなんだコイツ等?
見た感じはただの変態だけど。
白衣の方は研究者っぽいからサーダの人間か?
「そこの君。」
考えていると白衣の男に声をかけられた。
因みに顔はフードを深く被っているため見えない。
「何か?」
「君がこれをやったのかね?」
これとはたぶん、というか絶対に森のことだろう。
「もしそうだと言ったら?」
「実に興味深い! 君を体の髄まで調べたい!」
うわー・・・。変態さんでしたか。
というか隣のやつ露骨に気持ち悪い顔するなよ。
一応仲間なんだから。
というか仲間から引かれるあいつは何なんだ?
「此方も一つ聞くが、この土地の生命力に関する実験をしたのはお前か?」
「・・・もしそうだと言ったら?」
一瞬黙ってからさっきの俺の言葉を真似て訊ねてきた。
「別にどうもしないよ。ただその莫大な魔力を何に使う?」
「ほう。何やら知ってるようだが、目的までは知らないようだね。」
男はニヤニヤ笑いながらこちらの反応を伺っている。
「目的は何だ?」
「教えるとお思いかね?」
最初のコメントを投稿しよう!