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車の時計を見たら、
三時過ぎっつーか、四時前。
もうこんな時間か…。
早いなぁ。
「着きましたよ」
えっ、もう?
とか思うのは柄じゃないな。
目の前には小高い丘。
車から見ると、もう空が赤い。
「ちょうどいい時間かもしれない。
いいのが見れますよ」
少年にそくされて、外に出る。
爽やかな秋の風。
ちょっと寒い気がするけど、
なんだか気持ちがいい。
そこで改めて今が秋だって気付く。
どうりで空が綺麗なはずだ。
「さあ、早く」
そう言って、私の手を握る。
「…あ…」
ちょっとーっ!?
いきなり何ですかー!?
大胆じゃないっすかー!?
そして私!!
なんでこんなにドキドキっ!?
「ほら、見える!」
少年が振り向いて笑う。
その顔にまたドキドキした。
けど、それもまた吹き飛ぶほどの、
「…うわぁっ…!」
真っ赤に輝くの夕焼け。
「…キレイ…」
街が一望出来る丘。
ただ赤に染まっている。
風と近くにある木の葉の音がBGM。
「…すごい…」
「ここでいつも絵を描いてたんだ。
小さい頃からずっと。
この風景が好きで、
キャンバスに閉じ込めたくて」
少年が語り始めた。
それは彼の夢のお話。
「こんなあったかい色を、
音を、
風景を、
たった一枚の絵に詰め込めたら、
それが出来たらいいなって」
静かに、それでいて激しく。
それは不思議と穏やかで。
彼は笑っていた。
「でも気付いたんだよね。
俺がしたいのは、
本当にやりたいのは、
ただ絵を描いていたいってこと。
俺が感じた感動を、
誰かに知ってほしくて。
…って、こんな話、つまんないですね」
何、話してんだろ、
頭を掻きながら、照れて笑っていた。
「…つまんなくない。
つまんなくないよ」
少年の夢物語。
それはいつか私にもあったもの。
忘れてしまった大事なもの。
思い出すと、切なくなる。
「なんか嬉しいな。
君が君のこと話すと、楽しい」
やっぱり柄じゃない。
夕暮れでよかったな。
きっと私、顔真っ赤だ。
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