終わりに向かう夕暮れ。

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少年が鉛筆を走らせる。 散らばった色鉛筆。 使っている灰色と橙色と赤色。 なぜか黒色は使ってない。 なのに夕暮れの街だとわかる絵。 うまいなぁ。 すごい真剣だ。 「なあ、退屈してない?」 少年が、 スケッチから目を離さずに聞いてきた。 「退屈じゃないよ。 むしろ楽しいかも?」 走る色鉛筆。 出来上がっていく絵。 少年を見てると飽きないんだ。 「そっか…、ならいいや」 また絵にのめり込む。 やっぱりかわいいヤツだ、コイツ。 なんだか撫でてやりたいぞ? でも集中してるしなー…。 うずうずする。 うずうず、うずうず。 少年な気付かない。 それほど没頭中。 「君、彼女いないの?」 なぜか気になって聞いてみた。 少年はやっぱり絵を描きながら、 「いたら、お姉さんと一緒にいないよ」 と答えた。 そっか。 いないのか…。 って何で喜んでるのっ私!? 人の不幸(?)を喜ぶなんて最低…。 でもいないのかー…。 あわわわ、何だコレ! キモい、私、キモいよ! 「…よしっ、出来た!」 そんなことやってるうちに、 絵が出来たらしい。 スケッチのそのページをを丁寧に破く。 「はい、これお姉さんにあげる」 差し出された絵。 夕暮れのスケッチ。 「…私、に?」 ちょっと戸惑う。 なんでくれるんだろう? 「そ、お姉さんに。 つきあってくれたお礼」 絵を受け取って見る。 なんだかあったかい。 ただの絵なのに。 「つきあってもらったのは私だよ。 お礼なら私がしなきゃ!」 「いーの。 俺があげたいの」 「…でも…」 「じゃあ、俺の絵を誉めてくれたお礼。 …ならいいだろ?」 少年は笑う。 楽しそうに、嬉しそうに。 「…ありがとう…」 久しぶりだ。 心からありがとうなんて言ったの。 もう一度言いたいな。 「ありがとう」
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