星空の街。

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二人で丘に寝転んだ。 私の体には彼のブレザーがかかってる。 腕枕がちょっと恥ずかしくて嬉しい。 無言なのが照れくさくて、 私は彼に話し掛ける。 「星、やっぱりキレイだね」 「…うん」 こういう時、男の子って無口になる。 そこまで経験は無いから、 たまたまそうなのかもしれないけど。 「…なー、俺と…、その…、 して、よかったの、か?」 バカだなー…。 したくないならしないよ。 だけど、 「さあ、どうかなー?」 からかってやりたくなった。 寝返りをうって、彼の顔を見る。 「…それってー、」 私のにやけた顔を見て、 からかわれてるのに気付いて、 ぷいっと反対側を向いた。 腕枕だけは外さずに。 あはは、やっぱり照れてやんの。 かわいいヤツだなー…。 少し大胆になった私は、 彼を抱きしめてみた。 あったかい。 心臓の音もなんか気持ちいー。 そのまま私は眠ってしまったと思う。 次に目を開けたとき、 彼も寝息を立てていた。 私は起き上がる。 そろそろかな。 行かなきゃ。 今日一日、楽しかったよ。 ごめんね、私、ズルいんだ。 今日のことは思い出だけにしたい。 よくわかんないけど、 そのほうがキミのためにめ、 私のためにもいい気がするよ。 だから。 「バイバイ、大好きだよ」 小さな声で、お別れした。 のに。 「…やっぱり行っちゃうんだ」 彼も起き上がった。 目、覚めてたんだ。 でも不思議と焦りはしなかった。 「…うん、ごめんね」 けど、すごく悲しかった。 胸が裂けるかと思った。 「…、そっか。 バイバイ、俺も好きになってたよ」 生意気だ。 そのくせかわいい。 今日だけの恋人。 だから、さようなら。 「ありがとう、あと、さようなら」 彼に背を向けたら、涙が流れた。 彼の前で流れなくて、よかった。 結局、お互いの名前も知らないな、 小さな声が聞こえた。 ああ、名前も知らなかったね。 でも、もう必要ないよ。 いつか、また逢いたい。 私も小さな声で言ってみた。 きっと聞こえない。 聞こえていない。 私は車を出した。 彼を置いて。 月と星の海がキレイだった。
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