星の街の夜明け。

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あれから一年が経って、 私は花屋のバイトをしている。 その店の前を、 仲の良い二人が笑いながら、 手を繋いで歩いていった。 それを見て、羨ましくなって、 同時に、 微笑ましく思えた。 「ん、アレ、食べたい」 「…さっきから食べ過ぎじゃねー? 太るぞ」 「…ね、怒るよ」 なんだかピリピリしてきてるぞ? おーい。 「あのな、俺も金ねーの。 バイトもあんまりしてねーし」 「…でも食べたい」 「自分の金で」 「食べていいの?」 「…ふと」 ボカッ! 「いっつぅー」 「…カズマのバカ」 少年、彼女行っちゃうぞ? 少年は頭をガリガリ掻いて、 さっき彼女が食べたいと言った、 あ、クレープか。 アレおいしいよね。 を買ってた。 いやー、アツいね。 すると少年が今度は花屋に来る。 お、どうしたんだろ? 「あー、コレ、ください」 白い花、ユリを指差す。 「コレ? さっきの彼女にあげるのかな?」 見られてたことが恥ずかしいんだろう、 心なしか目が泳いでいる。 「多分クレープだけじゃ機嫌戻らねーし。 まあ、これくらいは」 一輪だけ包み、赤いリボンを付けた。 「じゃあ早く行かないとね? 彼女、向こうで待ってるよ?」 お金を払いながら、 少年が道の向こうを見ると、 ちょっと心配そうな彼女がいた。 「…あ、やべ。 ありがとうっス。 じゃ、また」 「はい、こちらこそ」 …また、来るのかな? だったらおもしろいのにな。 「今度は彼女と一緒にね」 少年が振り返って笑った。 「ああ、必ず」 日々に埋もれる、小さな約束。 それでもせずにはいられない。 守られなくてもいい。 小さな約束。
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